今回は、応力テンソルについて学習します。
式がいっぱいで吐きそうだよ。
定義からひとつづつ確認しよう。ぜひ紙に写して理解してね。
✔学習内容
・応力ベクトル、応力テンソルの意味と定義
・コーシーの公式を導く
・応力ベクトルの座標変換公式を導く
応力テンソルの考え方は、モールの応力円における主応力、主せん断応力の導出に必要な考え方ですので押さえておいてください。
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応力ベクトル
ここで、応力について再定義します。
「外力が作用している物体において、ある断面に着目したとき、その断面にはたらいている単位断面積あたりの力」を応力とします。
この応力のベクトルは垂直方向と2つのせん断方向に分けられ、
- 応力ベクトル: $T=\left(\sigma, \tau_1, \tau_2 \right)$
と表記します。
垂直応力は$\sigma$、せん断応力を$\tau_1, \tau_2$とします。
応力テンソル
ある応力のかかった物体中において、
立方体の3つの面に$\boldsymbol{T_x}$、$\boldsymbol{T_y}$、$\boldsymbol{T_z}$がそれぞれかかっており、
それぞれ図のように垂直応力とせん断応力に分解できます。
この9つの力を、
$$\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{xy}&\tau_{xz} \\ \tau_{yx}&\sigma_{yy}&\tau_{yz} \\ \tau_{zx}&\tau_{zy}&\sigma_{zz} \end{array}\right)$$
と表記し、応力テンソルと呼ばれます。
※応力の方向と符号については、面の外向きを正とします。
せん断応力の対称性について
物体が回転していないとき、モーメントのつりあいより、
$$\tau_{xy}=\tau_{yx}$$
となります。
3次元では、
- $\tau_{xy}=\tau_{yx}$
- $\tau_{xz}=\tau_{zx}$
- $\tau_{yz}=\tau_{zy}$
となりますので、応力テンソルは、
と表記できます。
コーシーの公式(2次元)
コーシーの公式は、「応力テンソルから、任意の面に作用する応力ベクトル」を求める公式です。
2次元の物体の断面dsに応力$T$が作用しているとします。
dx、dy面の応力テンソルは以下の通りです。
$$\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{xy} \\ \tau_{yx}&\sigma_{yy} \end{array}\right)$$
x方向の力の釣り合いは
$$T_xds=\sigma_{xx}dy+\tau_{yx}dx$$
$$T_x=\sigma_{xx}\frac{dy}{ds}+\tau_{yx}\frac{dx}{ds}$$
$$T_x=\sigma_{xx}\cos\theta+\tau_{yx}\sin\theta$$
となります。
同様に、y方向について力の釣り合いは、
$$T_y=\sigma_{yy}\sin\theta+\tau_{xy}\cos\theta$$
となります。
断面の単位法線ベクトル$\vec{n}$について、
$$\vec{n}=\left(\cos\theta, \sin\theta\right)=\left(l, m\right)$$
とすると、$\left(T_x, T_y\right)$は、
=\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{yx} \\ \tau_{xy}&\sigma_{yy} \end{array}\right)\left(\begin{array}{c}\cos\theta\\
\sin\theta\end{array}\right)$$
$$=\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{yx} \\ \tau_{xy}&\sigma_{yy} \end{array}\right)\left(\begin{array}{c}l\\
m\end{array}\right)$$
となります。これがコーシーの公式です。
$$\boldsymbol{\sigma}=\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{xy} \\ \tau_{yx}&\sigma_{yy} \end{array}\right)$$
とするとき、$\boldsymbol{\sigma^T}$を$\boldsymbol{\sigma}$の転置行列、
$$\boldsymbol{\sigma^T}=\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{yx} \\ \tau_{xy}&\sigma_{yy} \end{array}\right)$$
として、公式を一般化すると、
任意の断面に作用する応力ベクトル$\boldsymbol{T}$は、以下の通りです。
コーシーの公式
$$\boldsymbol{T} = \boldsymbol{\sigma^T\vec{n}}$$
コーシーの公式(3次元)
3次元において、応力テンソル$\boldsymbol{\sigma}$は、
$$\boldsymbol{\sigma}=\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{xy}&\tau_{xz} \\ \tau_{yx}&\sigma_{yy}&\tau_{yz}\\ \tau_{zx}&\tau_{zy}&\sigma_{zz} \end{array}\right)$$
です。
図の通り、任意の断面に応力$T$が作用してる場合、
x方向の力の釣り合いは、
断面の法線ベクトル$\boldsymbol{\vec{M}}$の方向余弦について、
- $l=\frac{\triangle{AOC}}{\triangle{ABC}}=\cos\alpha$
- $m=\frac{\triangle{BOC}}{\triangle{ABC}}=\cos\beta$
- $n=\frac{\triangle{AOB}}{\triangle{ABC}}=\cos\gamma$
とすると、$T_x$は、
$$T_x=\sigma_{xx}l+\tau_{yx}m+\tau_{zx}n$$
となります。
同様に、
$$T_y=\tau_{xy}l+\sigma_{yy}m+\tau_{zx}n$$
$$T_z=\tau_{xz}l+\tau_{yz}m+\sigma_{zz}n$$
とできます。
まとめると、
=\left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{yx}&\tau_{zx} \\ \tau_{xy}&\sigma_{yy}&\tau_{zy}\\ \tau_{xz}&\tau_{yz}&\sigma_{zz} \end{array}\right)
\left(\begin{array}{c}l\\ m \\ n\end{array}\right)$$
$$\boldsymbol{T}=\boldsymbol{\sigma^T\vec{M}}$$
と変形でき、コーシーの公式が示せます。
応力テンソルの座標変換
元の座標系: $\boldsymbol{a}=\left(\begin{array}{c}a_x,\ a_y, \ a_z\end{array}\right)$
新しい座標系: $\boldsymbol{a’}=\left(\begin{array}{c}a’_x,\ a’_y, \ a’_z\end{array}\right)$
新しい座標系の単位ベクトルを
$\boldsymbol{e’_x}=\left(\begin{array}{c}l_1,\ m_1, \ n_1\end{array}\right)$
$\boldsymbol{e’_y}=\left(\begin{array}{c}l_2,\ m_2, \ n_2\end{array}\right)$
$\boldsymbol{e’_z}=\left(\begin{array}{c}l_3,\ m_3, \ n_3\end{array}\right)$
より、
$$\boldsymbol{Q}=\left(\begin{array}{c}l_1&m_1&n_1\\ l_2&m_2&n_2 \\ l_3&m_3&n_3\end{array}\right)$$
とします。
以上より、新しい座標系と元の座標系の関係は、
$$\boldsymbol{a’}=\boldsymbol{Q}\cdot\boldsymbol{a}$$
と表せます。
ここで、応力テンソルの座標変換について考えていきます。
もとの座標系での応力を$\boldsymbol{T}$、新しい座標系での応力を$\boldsymbol{T’}$とします。
$\boldsymbol{a’}=\boldsymbol{Q}\cdot \boldsymbol{a}$なので、
$$\boldsymbol{T’}=\boldsymbol{Q}\cdot \boldsymbol{T}$$
とできます。
$\boldsymbol{T’}=\boldsymbol{\sigma’^T}\cdot \boldsymbol{n’}$、$\boldsymbol{T}=\boldsymbol{\sigma^T}\cdot \boldsymbol{n}$ですので、
$$\boldsymbol{\sigma’^T}\cdot \boldsymbol{n’}=\boldsymbol{Q}\cdot \boldsymbol{\sigma^T}\cdot \boldsymbol{n}$$
さらに、$\boldsymbol{n’}=\boldsymbol{Q}\cdot \boldsymbol{n}$ですので、
$$\boldsymbol{\sigma’^T}\cdot\boldsymbol{Q}\cdot\boldsymbol{n}=\boldsymbol{Q}\cdot \boldsymbol{\sigma^T} \cdot\boldsymbol{n}$$
$$\boldsymbol{\sigma’^T}\cdot\boldsymbol{Q}=\boldsymbol{Q}\cdot \boldsymbol{\sigma^T}$$
$$\boldsymbol{\sigma’^T}=\boldsymbol{Q}\cdot\boldsymbol{\sigma^T}\cdot\boldsymbol{Q^T}$$
となります。
物体が回転していないとき、$\sigma=\sigma^T$、$\sigma’=\sigma’^T$ですので、
$$\boldsymbol{\sigma’}=\boldsymbol{Q}\cdot\boldsymbol{\sigma}\cdot\boldsymbol{Q^T}$$
以上が応力テンソルの座標変換です。
応力テンソルの座標変換
$$\boldsymbol{\sigma’}=\boldsymbol{Q}\cdot\boldsymbol{\sigma}\cdot\boldsymbol{Q^T}$$
$$\left(\begin{array}{c} \sigma’_{xx}&\tau’_{xy}&\tau’_{xz} \\ \tau’_{yx}&\sigma’_{yy}&\tau’_{yz}\\ \tau’_{zx}&\tau’_{zy}&\sigma’_{zz} \end{array}\right) =\left(\begin{array}{c} l_1&m_1&n_1 \\ l_2&m_2&n_2 \\ l_3&m_3&n_3 \end{array}\right) \left(\begin{array}{c} \sigma_{xx}&\tau_{xy}&\tau_{xz} \\ \tau_{yx}&\sigma_{yy}&\tau_{yz} \\ \tau_{zx}&\tau_{zy}&\sigma_{zz} \end{array}\right)
\left(\begin{array}{c} l_1&l_2&l_3 \\ m_1&m_2&m_3 \\ n_1&n_2&n_3 \end{array}\right)$$
まとめ
いかがでしたでしょうか?
読むだけでは理解できないので、ぜひ紙に書いて勉強してみてください!