今回は、ばねだけでなくダンパも加えた振動について学習します。
✔学習内容
・ダンパの機能
・減衰振動の意味
・減衰振動の運動方程式を解く
・過減衰、不足減衰、臨界減衰の条件
ページコンテンツ
ダンパとは
ばねは変位に比例する抵抗を持ち、ばね定数$k$[N/m]は変位$x$[m]の場合、$kx$[N]の力を発生させます。
一方、ダンパは速度に比例する抵抗を持ち、粘性係数$c$[N·s/m]は変位$x$の場合、$c\dot{x}$[N]の力を発生させます。
減衰振動
「減衰振動」とは、振幅が時間経過に従って小さくなっていくような振動のことをいいます。
この、徐々に振幅が減少することを「減衰する」といいます。
減衰振動が生じる、最も簡単なモデルは、ばねとダンパで構成された質点の振動です。
図のようにひとつのばねとひとつのダンパで構成された系の場合、運動方程式は以下の通りです。
$$m\ddot{x}=-kx-c\dot{x}$$
ここで、$\omega_0=\sqrt{\frac{k}{m}}$、$\gamma=\frac{c}{2m}$とおくと、
運動方程式は、
$$\ddot{x}=-\omega_0^2x-2\gamma \dot{x}$$
とできます。
この、微分方程式を解くために、$x=e^{\lambda t}$を代入すると、
$$\lambda^2e^{\lambda t}=-\omega_0^2e^{\lambda t}-2\gamma \lambda e^{\lambda t}$$
$$\lambda^2+2\gamma \lambda+\omega_0^2=0$$
これを解くと、
$$\lambda=-\gamma\pm\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2}$$
となることが分かります。
ここで、ルートの中身に注目して場合分けをします。
過減衰
(I) $\gamma > \omega_0$ すなわち $c>2\sqrt{mk}$ のとき(抵抗力が強いとき)
$\lambda$は2つの解がともに負の実数となります。
運動方程式の一般解は、
$$x=C_1\cdot e^{\lambda+t}+C_2\cdot e^{\lambda-t}$$
となります。
この一般解は、$\lambda$が負の実数になることから、指数関数的に減少する2つの関数の和であることがわかります。
以下の図に示すようなグラフになります。
このような減衰のしかたを「過減衰」といいます。
不足減衰
(Ⅱ) $\gamma < \omega_0$ すなわち $c<2\sqrt{mk}$ のとき(抵抗力が弱いとき)
$\omega=\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2}$とすると、
$$\lambda=-\gamma\pm\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2}=-\gamma\pm i\omega$$
となります。よって、運動方程式の一般解は
$$x=C_1\cdot e^{(-\lambda+i\omega)t}+C_2\cdot e^{(-\lambda-i\omega)t}$$
$$x=e^{-\gamma t}\left(C_1\cdot e^{i\omega t}+C_2\cdot e^{-i\omega t}\right)$$
オイラーの公式$e^{\pm i\theta}=\cos\theta\pm i\sin\theta$より、
$$x=e^{-\gamma t} \left\{ \left(C_1+C_2\right) \cos \omega t+i \left( C_1-C_2 \right) \sin \omega t \right\}$$
$C_1+C_2=A$、$C_1-C_2=B$とおくと、
$$x=e^{-\gamma t}\left(A\cos \omega t+Bi\sin \omega t\right)$$
三角関数の合成を用いると、
$$x=e^{-\gamma t}\cdot C\cos\left(\omega t+\phi\right)$$
$\left(C=\sqrt{A^2+B^2}, \tan\phi=-\frac{B}{A}\right)$
となります。
この関数は、減少する指数関数とcos関数の積ですので、グラフは以下のようになります。
このような減衰を「不足減衰」といいます。
「不足減衰」は振幅が減少しながら振動しているため、「減衰振動」のひとつです。
臨界減衰
(Ⅲ)$\gamma = \omega_0$ すなわち $c=2\sqrt{mk}$ のとき
$$\lambda=-\gamma$$
となります。
運動方程式の解は
$$x=\left(At+B\right)e^{-\gamma t}$$
となります(導出は割愛します)。
このときの関数は以下に示すグラフとなります。
(Ⅰ)、(Ⅱ)と比べて最も早く減衰することがわかります。
このような減衰を「臨界減衰」と呼びます。
減衰振動に関する用語
固有角振動数
ダンパがない場合(減衰しない場合)のばねと質点だけの振動の場合の振動周波数(固有角振動数)$\omega_0$は
$$\omega_0=\sqrt{\frac{k}{m}}$$
となります。導出は、こちらを参考にしてください。
臨界減衰係数
臨界減衰するような粘性係数$c$[N·s/m]を、「臨界減衰係数:$c_c$」といいます。
$$c_c=2\sqrt{mk}$$
です。
減衰比
粘性係数$c$[N·s/m]と臨界減衰係数:$c_c$の比を「減衰比: $\zeta$」といいます。
$$\zeta=\frac{c}{c_c}=\frac{c}{2\sqrt{mk}}$$
導出の際は、(I) $\gamma > \omega_0$ 、(Ⅱ) $\gamma < \omega_0$ 、(Ⅲ)$\gamma = \omega_0$の3つに場合分けをしましたが、
減衰比$\zeta$を使って場合分けを考えると、以下のようになります。
- $\zeta>1$のとき、「過減衰」
- $\zeta<1$のとき、「不足減衰」
- $\zeta=1$のとき、「臨界減衰」
不足減衰時の固有角振動数
不足減衰時の固有角振動数$\omega$は、以下の式ように定義されます。
$$\omega=\sqrt{1-\zeta^2}\cdot\omega_0$$
次のように導出できます。
$\omega=\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2}$より、
$$\omega^2=\omega_0^2-\gamma^2$$
$\omega_0=\sqrt{\frac{k}{m}}$、$\gamma=\frac{c}{2m}$より、
$$\omega^2=\left(\sqrt{\frac{k}{m}}\right)^2-\left(\frac{c}{2m}\right)^2$$
$$\omega^2=\frac{k}{m}-\frac{c^2}{4m^2}$$
$$\omega^2=\frac{k}{m}-\frac{c^2k}{4m^2k}$$
$$\omega^2=\left(1-\frac{c^2}{4mk}\right)\frac{k}{m}$$
$$\omega^2=\left(1-\zeta^2\right)\omega_0^2$$
$$\omega=\sqrt{1-\zeta^2}\cdot\omega_0$$
まとめ
今回は減衰振動について学習しました。
ダンパをつけることでばねの振動を減衰させることができることが分かりました。
ばねろダンパの組み合わせは日常のあらゆるところで使われています。
そのような条件でどういった変位をとるのか、ぜひ、紙に書いて導出してみてください!