今回は、湿り蒸気とエンタルピーについて解説します。
✔学習内容
・湿り空気と乾き空気
・飽和水と飽和水蒸気
・エンタルピー、比エンタルピー
・乾き度と湿り度
・問題(令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-24)
ページコンテンツ
水蒸気に関する用語
水の蒸発、水蒸気について、用語と意味をまとめます。
飽和水
「飽和水」とは、これ以上加熱すると沸騰する状態の水のことです。
大気圧では、沸点100℃の状態の水のことを「飽和水」といいます。
飽和水は沸騰寸前ですが「水」であり、あくまで「液体」の状態であることに注意してください。
水蒸気
空気は窒素や酸素、アルゴンなどの様々な分子の混合でできています。
一般に大気中には、水分子も含まれています。
気体中に含まれる、気体状態の水のことを「水蒸気」といいます。
湿り空気と乾き空気
「湿り空気」と「乾き空気」は空気に注目し、水蒸気が「存在する」か「存在しないか」で分類したものです。
湿り空気
水蒸気を含む空気を「湿り空気」といいます。「湿り蒸気」「湿り水蒸気」などと呼ばれることもあります。
乾き空気
水蒸気を含まない空気を「乾き空気」といいます。「乾き蒸気」「乾き水蒸気」などと呼ばれることもあります。
飽和水蒸気
「飽和水蒸気」とは、これ以上水蒸気を含むことができない状態になった空気のことです。
圧力と温度が一定の場合、空気に蒸発して水蒸気になることができる水の最大量は決まっています。
エンタルピー
エンタルピー$H$は物体の発熱や吸熱のエネルギー量を示す状態量です。
$$H=U+PV$$
- $H$: エンタルピー [kJ]
- $U$: 内部エネルギー [kJ]
- $PV$: 仕事 ($P$: 圧力 [Pa]、$V$: 体積 [m3]) [kJ]
比エンタルピー
「比エンタルピー」とは、物質の単位質量あたりのエンタルピーです。
単位は[J/kg]で表します。
例えば、比エンタルピーが 500 [kJ/kg]の飽和水 1 [kg]が 2500 [kJ]の熱を得て、飽和水蒸気になったとすると、
飽和水蒸気の比エンタルピーは 3000 [kJ/kg]と考えられます。
乾き度
「乾き度」とは、水蒸気中に含まれる気相状態の水分子の割合のことです。
気相状態の水(水蒸気)が 20 [kg]、液相状態の水が 80 [kg]あるときの乾き度は、
$$\frac{20}{20+80}=0.2$$
乾き度 20%です。
乾き度が0%の場合、気相成分がまったくなく「飽和水」の状態を意味します。
乾き度が100%の場合、液相成分が全く存在しない「飽和水蒸気」の状態を意味します。
湿り度
逆を意味する用語で「湿り度」もあります。
気相状態の水(水蒸気)が 20 [kg]、液相状態の水が 80 [kg]あるときの乾き度は、
$$\frac{80}{20+80}=0.8$$
乾き度 80%です。
湿り度は乾き度の逆で、
湿り度が0%の場合、気相成分がまったくなく「飽和水」の状態を意味します。
湿り度が100%の場合、液相成分が全く存在しない「飽和水蒸気」の状態を意味します。
問題
問題画像は公益社団法人日本技術士会ホームページからダウンロードしたものです。
【令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-24】
【解答】
加えられた 1600 [kJ]の熱は、1 [kg]の飽和水(液相成分)の一部が水蒸気(気相成分)になるために使用されたと考えると、
飽和水と飽和水蒸気の比エンタルピーの差$2706-505=2201$ [kJ/kg]のうち、1600 [kJ]が水蒸気(気相成分)であると考えられます。
よって、乾き度$x$は、
$$x=\frac{1600}{2706-505}$$
$$=\frac{1600}{2201}$$
$$=0.7269$$
よって、正解は④です。
まとめ
今回は、湿り水蒸気の問題を扱いました。
皆様の理解に役立てば幸いです。
技術士一次試験機械部門において、乾き度に関する問題は数年に1度出題されています。
用語の意味を忘れやすいので、問題がなにを聞いているのか注意して過去問演習してください。