「投稿論文を書けって教授に言われるけど、論文を書くってなにすればいいの?」
「奨学金を借りてる人は論文を書いたほうがいいと聞いたけど本当?」
「論文ってどうやって発行されてるの?」
大学の研究室では、「論文」によく触れます。
研究室によっては教授から、論文を書くようプレッシャーをかけられている方もいるでしょう。
研究室に入ったばかりの学生にとってはそもそも論文に触れるのが初めての経験です。
学部生の方や修士1年生の方の多くは論文を投稿したことなどないと思います。
しかし、「論文がどんな風にできているのか」「論文を自分で書くとどんないいことが起こるのか」についてはいまいち教えてもらえません。
本記事では、実際に修士課程2年間で3本の論文を書いたぺろが考える論文投稿のメリットと初めて論文を書く人が知っていたほうがよい「論文が掲載されるまでの流れ」を説明します。
大学院ははじめて論文を書くのに一番適した時期と環境だよ。
- 地方旧帝大の修士課程(工学院)を卒業しました。
- 修士課程在学中の2年間で合計3本の論文を執筆しました。
- 現在は、技術系のお仕事をしています。
修士課程在学中もしくは学部生の方
日本学生支援機構の第一種奨学金を借りている方
理系の方
※本記事で説明する内容は主に工学系の分野での話になります。論文は専門分野によって多少、ルールやマナー、作法が異なることがありますのでご注意ください。
ページコンテンツ
修士学生が論文を書くメリット
まずはじめにぺろが考える、論文投稿のメリットを挙げたいと思います。
投稿論文がどのようなプロセスで掲載されるのか流れがわかる
普段から研究室などで目にする論文がどのような流れでできているのかが身を持って経験できます。
将来、研究者になる予定ではなかったとしても、このプロセスを知ることは大きな財産となるでしょう。
自分で書いた論文があると、研究者の端くれである自覚が生まれます。
自分の研究テーマに近い論文などにより興味が深くなり、こだわりや好き嫌いが生まれ、一歩踏み込んだことが考えられるようになるでしょう。
データによる事実と筆者の仮説を分けて考えられるようになる
論文を読んでいて、不可解な点やおかしいと思った経験はありませんか?
論文が掲載された経験があると、論文や研究者の主張に対して一歩引いた視点で考えられるようになります。
論文はあくまで、その研究者が得られたデータとそこから導いた仮説を書いているに過ぎません。
とくに、論文をまとめることに慣れてくると、自分の主張や論文のストーリーに合うデータのみを取ろうと実験するようになります。
もちろん、虚偽やデータの改ざんはあってはなりませんが、データのまとめ方や見せ方次第で偏った主張をしている場合もあります。
自分で論文を書いて雑誌に掲載された経験があると、他の人の論文を鵜呑みにしてはいけないとさらに強く感じるようになると思います。
研究分野に詳しくなる
論文を書く際は、関連した他の論文を多く読むことになります。
とくにIntroductionやDiscussionでは、自身の研究の背景となる他の論文や、自分の主張を補助するような内容の他の論文を引用し、説得力ある文章をつくることが求められます。
執筆にあたって、自分の研究を深く知るきっかけとなるでしょう。
とくに、はじめての執筆では苦労することになると思いますが、研究分野への知識は確実に深まります。
英語で文章を書く練習になる
論文のようなフォーマルな文章には様々な細かい英語のルールがあります。
日本語ですら、フォーマルな文章を書くのに慣れていない学生が英語で書くとなると、大変苦労することでしょう。
実際、筆者も大変苦労しました。しかし、この経験とここで学んだ英語の書き方は今のお仕事でも生きています。
とくに研究寄りのお仕事や、海外に渡航する可能性のある会社を希望する場合、英語は避けては通れません。
英語を話すのが苦手であったり、相手の言っていることが理解できなかったとしても、最低限、恥ずかしくない英語の文章が書けるようになるチャンスです。
奨学金返済免除申請において有利にはたらく
日本学生支援機構の第一種奨学金を借りている方は、絶対に投稿論文があったほうがいいです!
日本学生支援機構の第一種奨学金には返還免除の制度があります。
大学院在学中の業績を学校と日本学生支援機構が評価し、内容に応じて免除額が決まります。
その評価項目のなかで大きなウェイトを占めるとされているのが投稿論文の数です。
筆者も奨学金を借りていましたが、返還免除の制度により、半額の免除を受けることができました。
これは紛れもなく、投稿論文があったことが大きいと思っています。
日本学術振興会特別研究員の採用に有利にはたらく
博士課程にいきたいと思っている方は、日本学術振興会の特別研究員に採用を目指すと思います。
特別研究員に採用されると、大学院博士課程在学者(DC)の場合、研究奨励金が月額20万円ほど入ってきます。
この特別研究員の採用に関して重要視しているとされるのが投稿論文の数です。
博士課程を目指し、日本学術振興会特別研究員の採用を目指される方はすぐにでも論文投稿にとりかかるべきです。
論文投稿は大変
デメリットとしては何と言っても「だるい!」ことが挙げられます。
データ収集から関連する論文のリサーチまで、論文を書くだけでも大変ですが、論文を提出後、査読を受け、掲載決定までの道のりも大変です。
論文投稿には大変時間がかかることを覚えておいてください。
論文をジャーナル(雑誌)に提出してから、論文掲載まで最低でも半年はかかります。
奨学金の返還免除の申請書類などは修士課程卒業時に提出することが求められます。
その頃までに論文掲載が間に合うよう逆算して動く必要があります。
自分の論文が雑誌に掲載されるまでの道のり
論文は雑誌に原稿をはじめて提出してから掲載が決定するまで最短でも半年程度かかります。
実験をしてデータを集めるところから考えるともっと時間がかかります。
「とにかく時間がかかる」ということを覚えておいてください!
1.実験、データ収集
普段から実験を行い、データを収取します。
自分が書きたい論文のストーリーを考えながら、そのストーリーを補助するデータを取るよう実験を進められるようになると効率的になります。
ただ、学部生や修士1年生の頃などはそこまで考えながら実験できないと思いますので、実験で得られたデータを見ながら傾向を掴み、論文を書く際に足りないと思ったデータを取るのを繰り返しながら成長していくことになると思います。
2.データまとめ、論文の原稿を書く
まずは、テキストベースで論文のアウトラインを作ります。
全体のストーリー構成を考えながら、Introduction、Experiment、Result、Discussion、Conclusionの各パートを執筆します。
このとき、本文と図は別々のファイルで作ることをおすすめします。
3.投稿したいジャーナル(雑誌)を選ぶ
論文を提出するジャーナルを決めます。
そして、自分の書いた論文を投稿したいジャーナルの投稿規定に合うように修正します。
ジャーナルはそれぞれ個々の細かい執筆ルールが存在します。
なかにはとても複雑な投稿規定のものもあれば、比較的ゆるいジャーナルもあります。
どのジャーナルに挑戦するかは、あなたの実力や発表する内容にもよるので、その分野に詳しい指導教官と相談して決めるのがよいでしょう。
大学教授は論文を投稿したり、査読をするのも仕事のひとつなので、様々なジャーナルの特性を理解しています。
あなたに適したジャーナルを教えてくれるでしょう。
4.指導教官の確認をとる
論文が形になったらまずは指導教官に見てもらいましょう。
可能であれば、このとき、ネイティブチェックも受けることをおすすめします。
おそらく、指導教官の馴染みのネイティブの方がいらっしゃると思うので紹介してもらうのが一番よいと思います。
もし、内容がよくても、英語のせいでリジェクトされるなんてことになっては残念ですので、英語のミスは極力なくした状態で論文を提出するのが賢明です。
また、企業との共同研究の場合は、このときに会社の承認を得るのが必要です。
5.論文を提出する
ほとんどの場合、論文の提出はオンライン上で行われます。
この際、必要になるのは論文本文と図表のファイルとともに、カバーレターが必要になります。
また、共著者の署名入りの宣誓書などを同時に提出するときもあります。
6.査読を受け、レビュアーのコメントに返答する
論文をオンライン上で提出すると、ジャーナルのレビュアーがあなたの論文をレビューし、アクセプトやリジェクト、修正の要求などの返事がきます。
筆者の経験では、提出してから2週間から場合によっては1ヶ月以上かかります。
修正の要求を受けた場合は、レビュアーのコメントに返事を書き、修正した箇所がわかるようにしたファイルとともに再度提出します。
7.何度かレビュアーとやりとりを重ねる
レビュアーとのやりとりを繰り返しながらアクセプトを目指します。
レビュアーのコメントを受け取ってから、返答までには期日が決められており、だいたい2週間程度になっています。
短い間で、要求に対してどう対処するかを考えて返答しなければいけません。
8.アクセプト
アクセプトされると、出版直前の著者校正などを経て、論文が出版されます。
まとめ
論文を投稿するのはとてもとても大変です!
しかし、ひとつの著作物を完成させた経験は、必ず生きることでしょう。
ぜひチャレンジしてみてください!