2022年2月末、技術士一次試験の合格発表がありました。
また、同時に令和3年度の合格率や試験結果にまつわる統計情報の公開がありました。
受験された皆様、お疲れ様でした。
合格された方、また残念ながら不合格だった方ともにいらっしゃるかと思いますが、本記事では令和3年度の技術一次試験を振り返ってみたいと思います。
技術士一次試験機械部門を受験した筆者の体験と、技術士一次試験の概評をします。
「技術士一次試験を受けたいけど、どのくらいの難易度だろう」
「令和3年度はどんな試験内容だったの?」
「難化してるの?」
といった疑問に答えます。
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自己紹介
はじめまして。ぺろと申します。
地方の旧帝大理系院卒で、技術系のお仕事をしています。
会社が推奨していることもあり、令和3年度技術士一次試験の受験に挑戦しました。
専門科目は機械部門で受験しました。
紆余曲折ありましたが、およそ300時間ほど勉強し、なんとか合格することができました。
使用した参考書や学習スケジュールについてはこちらの記事を参考にしてください。
技術士一次試験とは?
技術士とは?
「技術士」とは、国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者に与えられる国家資格です。
「技能士」が主に現場作業者(ブルーカラー)の能力を認める資格であるのに対し、「技術士」は管理側(ホワイトカラー)の専門知識や能力を認める資格となっています。
大変難易度が高いことで知られており、技術士2次試験(技術士を名乗ることのできるようになる試験)の合格率は近年は20%を下回っています。
また、受験者の半数以上は大学または大学院卒です。
多くの受験者は理系の大学を卒業し、高学歴な方が多く受験する試験となっています。
それにもかかわらず、20%を切る合格率ですので、難易度の高さが伺えます。
技術士の受験者や合格率に関する詳しい情報は、公益社団法人日本技術士会のホームページを参考にしてください。
技術士は意味ない?
「技術士の取得は意味がない」といった意見が時折見受けられます。
それは、技術士が業務独占資格(その資格を有するものでなければ携わることを禁じられている資格)ではなく名称独占資格(その資格を有するものだけが「技術士」を名乗ることができる)であるためです。
技術士をもっていなくても技術系の仕事はできます。
技術士を取得する意味
「技術士」の名称が役に立つかどうかは業界によります。
たとえば、建設コンサルタントの業界では、入札に際して技術士の資格を持っていると優遇・加点などがあり有利に働くことがあります。
こちらは日本技術士会のホームページからダウンロードした、令和2年度の技術士2次試験の統計結果です。
専門分野ごとに受験者を確認すると建設分野の受験者が圧倒的に多いことがわかります。
建設コンサルタントの業界では、会社が技術士の資格取得を推奨していることが多いです。
また、「技術士」の資格を持っていると、専門分野の技術に関する知識の証明となり、転職などに有利に働くことがあります。
技術士になるためには
技術士になるためには、技術士試験を受験する必要があります。
技術士試験は1次試験と2次試験があります。
1次試験、2次試験ともに筆記試験です。
1次試験は選択問題のマーク試験で、2次試験は記述式の試験となっています。
1次試験の受験資格はなく、どなたでも受験することができます。1次試験合格者は登録を行い条件を満たせば「技術士補」として活動することができます。
一方、2次試験の受験には、1次試験合格と実務経験が求められます。
詳しい受験資格については日本技術士会のホームページを参考にしてください。
参考:公益社団法人 日本技術士会 令和4年度 技術士第二次試験の実施について
また、JABEEが認定したプログラムの修了者は、技術士の第一次試験が免除される制度もあります。
詳しくは一般社団法人日本技術者教育認定機構のホームページを確認してください。
令和3年度技術士一次試験の内容
試験日程
令和3年度技術士1次試験は以下のスケジュールで実施されました。
申込期間:令和3年6月17日〜30日
試験日:令和3年11月28日
合格発表:令和4年2月28日
試験科目
一次試験の試験科目は以下の3つです。
専門科目:技術部門に関わる基礎知識及び専門知識を問う試験
適性科目:技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う試験
基礎科目:科学技術全般にわたる基礎知識を問う試験
合格判定基準
それぞれの試験科目で50%以上の得点で合格となります。
基礎科目:50%以上の得点(8/15問以上の正解)
適性科目:50%以上の得点(8/15問以上の正解)
専門科目:50%以上の得点(13/25問以上の正解)
難易度
各試験科目の難易度は以下の通りです。
専門科目
難易度:例年通り
技術士会のホームページで公開されている過去問題とまったく同じ問題も多くあり、過去問を5年分ほど解けるようになっていたら、合格に必要な最低限の得点はできるようになっていました。
適性科目
難易度:難化!
近年、正誤を正確に判断させる出題形式が増え、さらにいままでの過去問になかったような問題もありました。
基礎科目
難易度:例年通り
過去問と同様や似たような問題が多く、解き方を理解していれば応用させて解くことができるようになっていました。
各専門科目の詳細な感想に関してはこちらにまとめましたので参考にしてください。
ぺろの合否結果
なんとかぎりぎりの点数ですが、合格することができました。
得点は自己採点と変わらず、ほっとしています。
やはり、難化した適性科目の得点が合格ラインぎりぎりでした。
適性科目については自信をもって解答できた問題はほとんどなかったので妥当な点数だと感じています。
合格率の変化
一次試験の合格発表と同時に統計情報も発表されました。
令和3年度の試験結果を確認していきます。(画像は日本技術士会ホームページからダウンロードしたものです。)
技術部門別の結果を確認していくと、1000人以上の受験者数のいる機械部門や電気電子部門、建設部門、上下水道部門ではおよそ30%程度の合格率だったことがわかります。
全体の合格率は31.3%でした。
こちらは、昭和59年から令和3年度の合格率ですが、このなかで最低の合格率だったことがわかります。
機械部門に関して過去5年の合格率をまとめると、以下のようになりました。
(日本技術士会ホームページから抜粋)
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 受験者に対する合格率 |
平成29年度 | 2,590 | 2,080 | 1,036 | 49.8 |
平成30年度 | 2,446 | 1,884 | 656 | 34.8 |
令和元年度 | 2,514 | 908 | 448 | 49.3 |
令和2年度 | 2,093 | 1,573 | 877 | 55.8 |
令和3年度 | 2,400 | 1,752 | 599 | 34.2 |
令和3年度はここ数年で一番合格率の低い試験となったようです。
やはり、適性科目が難化したことが原因と思われます。
来年以降に受験する方はぜひ適性科目をおろそかにせず、万全の対策をおこなってください。
※1000人以上の受験者の技術部門のなかでは、環境部門のみが合格率が低いので、環境部門の専門科目は難しかったのかもしれません。
受験予定の方へ
令和3年度技術士一次試験は難化しました!
とくに、適性科目が難化しました。
適性科目の勉強は専門科目に比べておろそかになりがちです。
どうしても、ボリュームが大きい専門科目の勉強に時間がとられがちですが、分野を取捨選択するなどし、適性科目にも時間を割くようにしましょう!