今回は、ひずみエネルギーを扱います。
ひずみエネルギーってなに?
✔学習内容
・外力による仕事とその導出方法
・曲げを受ける梁のひずみエネルギー
・問題(令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-6)
ひずみエネルギーとは、外力が加えられ歪んだ物体に蓄えられるエネルギーのことです。
記事の最後に技術士一次試験の過去問を解説します。
必ず計算できるようになりましょう。
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外力と仕事
荷重$P$の外力が働き、物体が$\lambda$だけ伸びて変形したとします。
このとき、外力が物体にした仕事$W$は以下の通りになります。
- 物体が外力にした仕事
- $$W=P × \lambda$$
- $W$: 仕事[J]
- $P$: 荷重[N]
- $\lambda$: 伸び[m]
弾性域での仕事
弾性域では、荷重$P$と伸び$\lambda$は比例します。
比例定数を$k$とすると、
$$P=k\lambda$$
と表せます。
荷重$P$により、$d\lambda$の伸びが生じた場合、
$$W=P{\cdot}\lambda$$
となります。これが、$0$から$\lambda_0$まで変化したとき、
$$W= \int_{0}^{\lambda_0}Pd\lambda$$
$$= \int_{0}^{\lambda_0}\left(k\lambda\right)d\lambda$$
$$= \frac{k}{2}\lambda_0^2$$
$$= \frac{1}{2}P_0\lambda_0$$
と変形できます。
$0$から$\lambda_0$まで変形したとき、外力のした仕事は弾性域がつくる三角形の面積と等しくなります。
塑性域での仕事
一方、伸び$\lambda$が塑性域($\lambda=\lambda_1$)に達した場合も同様に、
$$W= \int_{0}^{\lambda_1}Pd\lambda$$
となります。
ここで、応力と歪みの関係より、$P=A\sigma$、$d\lambda=Ld\epsilon$とできるので、
$$W= \int_{0}^{\lambda_1}\left(A\sigma\right)Ld \epsilon$$
$$= AL\int_{0}^{\lambda_1}\sigma d\epsilon$$
- $A$: 断面積[$m^2$]
- $L$: 長さ[$m$]
と変形することができます。
応力と歪みの関係について復習したい方はこちらを参考にしてください。
ここで、求めた仕事$W$は、物体内に蓄えられるエネルギー(ひずみエネルギー$U$)と考えられるので、
$$W= U = AL\int_{0}^{\lambda_1}\sigma d\epsilon$$
となります。
曲げを受けるはりのひずみエネルギー
これまでの式より、単位体積あたりのひずみエネルギー$u\left(=\frac{U}{AL}\right)$は、
$$u=\frac{U}{AL}$$
$$=\int_{0}^{\epsilon} \sigma d\epsilon$$
$$=\int_{0}^{\epsilon} \left(E\epsilon\right) d\epsilon$$
$$=\frac{1}{2}E\epsilon^2$$
$$=\frac{\sigma^2}{2E}$$
と変形することができます。
ここで、応力$\sigma$がはりの中立面から$y$の位置にあり、
はりの断面二次モーメントが$I_z$のとき、
$$\sigma=\frac{M}{I_z}y$$
ですので、
$$u=\left(\frac{M^2}{I_z^2}y^2\right)\frac{1}{2E}$$
となります。
よって、体積が$dV(=dA\cdot dx)$だけ変化するとき、ひずみエネルギー$U$は、
$$\small U=\int_{V} u\cdot dV$$
$$\small =\int_{0}^{L} \int_{A}\left(\frac{M^2y^2}{2EI_z^2}\right)dA\cdot dx$$
$$\small =\int_{0}^{L} \frac{M^2}{2EI_z^2}dx\cdot\int_{A}y^2dA$$
$$\small =\int_{0}^{L} \frac{M^2}{2EI_z^2}dx\cdot I_z^2$$
$$\small =\int_{0}^{L} \frac{M^2}{2EI_z}dx$$
となります。
問題
問題画像は公益社団法人日本技術士会ホームページからダウンロードしたものです。
【令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-6】
【解答】
先端にモーメント$M_0$が作用するので、
$$M-M_0=0$$
$$M=M_0$$
よって、はりに蓄えられるひずみエネルギー$U$は
$$U=\int_{0}^{l} \frac{M_0^2}{2EI}dx$$
$$=\frac{M_0^2l}{2EI}$$
よって正解は④です。
まとめ
曲げをうけるはりのひずみエネルギー$U$は以下の通りです。
$$U=\int_{0}^{L} \frac{M^2}{2EI_z}dx$$
- $L$: 長さ[$m$]
- $M$: モーメント[$m{\cdot}N$]
- $E$: ヤング率[$N/m^2$]
- $I_z$: 断面二次モーメント[$m^4$]
実際に問題を解く際は公式を暗記しておくのがよいでしょう。