今回は、ヒートポンプの成績係数について学習します。
✔学習内容
・カルノーサイクルの仕事
・逆カルノーサイクルの仕事
・成績係数(COP)の定義
・エントロピーの定義とカルノーサイクル
・問題(令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-23)
ページコンテンツ
カルノーサイクルと逆カルノーサイクル
カルノーサイクル
高温と低温の熱源があった場合、熱エネルギーは高温から低温へ移動していきます。
カルノーサイクルは高温熱源(温度$T_h$)から低温熱源(温度$T_c$)に移動する熱の一部を仕事$W$として取り出すものです。
火力発電などがこれにあたります。
この取り出す仕事$W$は、熱機関が高温熱源から受け取る熱エネルギーを$Q_h$、熱機関から低温熱源へ移動する熱エネルギーを$Q_c$とすると、
$$W=Q_h-Q_c$$
となります。
逆カルノーサイクル
逆カルノーサイクルはカルノーサイクルとは逆の向きに熱エネルギーが移動します。
通常、低温から高温へ熱エネルギーは移動しません。
そこで、外部から仕事$W$を入力することで、低温熱源(温度$T_c$)から、高温熱源(温度$T_h$)へ移動させます。
ヒートポンプなどがこれにあたります。
ここで入力した仕事$W$も同様にこのように表せます。
$$W=Q_h-Q_c$$
成績係数: COP
ヒートポンプなどの性能を洗わう指標としてCOP(Coefficient of Performance)があります。
以下の式によって定義されます。
成績係数: COP(Coefficient of Performance)
$$COP=\frac{Q}{W}$$
- $Q$: 温度維持のために供給される熱量
- $W$: 使用される仕事(電力)
たとえば、逆カルノーサイクルの場合のCOPは、
$$COP=\frac{Q_h}{W}=\frac{Q_h}{Q_h-Q_c}$$
となります。
エントロピー
熱力学においてエントロピーは分子の乱雑さを示し、以下の式で表現されます。
エントロピー変化
$$\Delta S=\frac{\Delta Q}{T}$$
- $\Delta S$: エントロピー増加量
- $\Delta Q$: 熱量の変化量
エントロピー
$$S=\frac{Q}{T}$$
- $S$: エントロピー
- $Q$: 熱量
このエントロピーは「不可逆変化」の際には増大します($\Delta S>0$)。
「可逆変化」の場合には変化しません($\Delta S=0$)。
カルノーサイクルは逆変化(逆カルノーサイクル)できる熱サイクルですので、エントロピー$S$は一定のままです。
よって、以下の式が成り立ちます。
$$S=\frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c}=const$$
熱効率
COPと紛らわしい言葉として「熱効率」があります。
熱効率$\eta$は次の定義で示されます。
熱効率
$$\eta=\frac{W}{Q}$$
- $W$: 正味の仕事
- $Q$: 入力された熱量
たとえばカルノーサイクルの熱効率$\eta$は、
$$\eta=\frac{W}{Q}$$
$$=\frac{W}{Q_h}$$
$$=\frac{Q_h-Q_c}{Q_h}$$
となります。カルノーサイクルは可逆変化ですので、$\frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c}$であることを加味すると、
$$\eta=\frac{W}{Q_h}$$
$$=\frac{Q_h-Q_c}{Q_h}$$
$$=\frac{T_h-T_c}{T_h}$$
とすることもできます。
問題
問題画像は公益社団法人日本技術士会ホームページからダウンロードしたものです。
【令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-23】
【解答】
問題文より、電気エネルギーによって低温熱源から高温熱源に熱を移動させる「逆カルノーサイクル」であることがわかります。
逆カルノーサイクルでは、エントロピーが一定: $\frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c}$より、COPは以下のようになります。
$$COP=\frac{Q_h}{W}$$
$$=\frac{Q_h}{Q_h-Q_c}$$
$$=\frac{T_h}{T_h-T_c}$$
$$=\frac{(23+273)}{(23+273)-(2.0+273)}$$
$$=\frac{296}{296-275}$$
$$=14.1$$
必要になる電力$W$は、
$$W=\frac{Q_h}{COP}=\frac{2.8\times10^3}{14.1}=198.6$$
よって、正解は③です。
まとめ
今回は、ヒートポンプのCOPに関する問題を扱いました。
COPの問題は過去にも技術士一次試験に出題されています。
ほかの過去問もぜひ確認してください。