今回は丸棒のねじりです。
実際の試験では公式として暗記しておくのをおすすめするよ。
✔学習内容
・中実丸棒のねじり角、せん断応力、最大せん断応力
・中空丸棒の場合はどうなるか?(断面二次モーメントについて)
・問題(令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-7)
ねじりモーメント、ねじり角、比ねじり角などがでてきます。
違いを知り、式を導出してみてください。
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ねじりモーメントとねじれ角
ねじりモーメントとは、図のように丸棒などの物体をねじる方向にかかるモーメントのことをいいます。
このときのねじれる角度をねじれ角といいます。
今回は以下のように定義します。
$T$: ねじりモーメント[$N{\cdot}m$]
$\phi$: ねじれ角[rad]
丸棒のねじり
直径$D$、長さ$dx$の丸棒の端にねじりモーメント$T$が作用しているとします。
中心から$r$の位置に作用するせん断ひずみ$\gamma$は、
$$\gamma=r\cdot\frac{d\phi}{dx}$$
となります。よって、せん断応力$\tau$は、
$$\tau=G\cdot\gamma=G\cdot r\cdot\frac{d\phi}{dx}$$
ここで、$\frac{d\phi}{dx}=\theta$とすると、
$$\tau=Gr\theta$$
となります。
$\theta$は単位長さあたりのねじり角であり、比ねじり角といわれます。
ここで、丸棒断面に生じるせん断応力$\tau$を考えます。
中心から$r$の位置にある幅$dr$の輪に働く微小モーメント$dT$は
$dT=$(輪までの距離)×($\tau$により輪に作用する力)ですので、
$$dT=r\times(\tau\cdot2\pi r\cdot dr)$$
$$=2\pi r^2 dr\cdot\tau$$
$\tau=Gr\theta$だから、
$$dT=2\pi Gr^3\theta dr$$
これを断面全体について積分すると、$T$になるので、
$$T=\int_{0}^{\frac{D}{2}} 2\pi Gr^3\theta dr$$
$$=\frac{\pi D^4}{32}G\theta$$
ここで、丸棒の断面二次極モーメント$I_p=\frac{\pi D^4}{32}$ですので、
$$T=I_pG\theta$$
比ねじり角$\theta$は、
$$\theta=\frac{T}{G\cdot I_p}$$
$$=\frac{32T}{\pi GD^4}$$
とくに、丸棒の長さ$l$の場合、比ねじり角$\theta$は、
$$\theta=\frac{d\phi}{dx}=\frac{\phi}{l}$$
ですので、ねじり角$\phi$は
$$\phi=\frac{Tl}{G I_p}$$
と表せます。
また、せん断応力$\tau$は、
$$\tau=Gr\theta=Gr\cdot\frac{32T}{\pi D^4}$$
$r=\frac{D}{2}$のとき、最大せん断応力$\tau_{MAX}$となるので、
$$\tau_{MAX}=G\cdot \frac{D}{2}\cdot\frac{32T}{\pi D^4}$$
$$=\frac{16T}{\pi D^3}$$
とできます。
断面二次極モーメント
中実丸棒の断面二次極モーメント$I_p$は、
$$I_p=\frac{\pi D^4}{32}$$
と述べましたが、中空丸棒の断面二次極モーメント$I_p$は、
内径$D_1$、外径$D_2$とすると、
$$I_p=\frac{\pi}{32}\left(D_2^4-D_1^4\right)$$
となります。
問題
問題画像は公益社団法人日本技術士会ホームページからダウンロードしたものです。
【令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-7】
【解答】
中軸丸棒Aについて比ねじり角は、
$$\theta=\frac{T}{G\cdot I_p}=\frac{32T}{\pi Gd^4}$$
となるので、最大せん断応力$\tau_A$は、
$$\tau_A=G\cdot \frac{d}{2}\cdot\frac{32T}{\pi d^4}$$
$$=\frac{16T}{\pi d^3}$$
中空丸棒Bについて断面二次極モーメント$I_p$は、
$$I_p=\frac{\pi}{32}\left(D_2^4-D_1^4\right)$$
$$=\frac{\pi}{32}\left\{ d^4-\left(\frac{d}{\sqrt{2}}\right)^4\right\}$$
$$=\frac{\pi}{32}\cdot\frac{3}{4}d^4$$
よって、比ねじり角$\theta$は、
$$\theta=\frac{T}{G\cdot I_p}$$
$$=\frac{32T}{\pi Gd^4}\cdot\frac{4}{3}$$
最大せん断応力$\tau_B$は、
$$\tau_B=G\cdot \frac{d}{2}\cdot\frac{32T}{\pi d^4}\cdot\frac{4}{3}$$
$$=\frac{16T}{\pi d^3}\cdot\frac{4}{3}$$
以上より、$\tau_B/\tau_A$は、
$$\frac{\tau_B}{\tau_A}=\frac{4}{3}$$
よって、正解は②です。
まとめ
導出した式をまとめます。
丸棒の比ねじり角$\theta$
$$\theta=\frac{\phi}{l}$$
丸棒のねじり角$\phi$
$$\phi=\frac{Tl}{G I_p}$$
せん断応力$\tau$
$$\tau=Gr\theta$$
側面最表面($r=\frac{D}{2}$)にて$\tau$は最大せん断応力となる
中実丸棒の断面二次極モーメント$I_p$
$$I_p=\frac{\pi D^4}{32}$$
中空丸棒の断面二次極モーメント$I_p$
$$I_p=\frac{\pi}{32}\left(D_2^4-D_1^4\right)$$
公式を使いこなせるまで、演習を積むことが大切です。
過去問を中心に練習しましょう。