今回は材料力学の基礎、応力と歪みを説明します。
真応力と公称応力、真ひずみと公称ひずみの違いはなに?
材料力学の基礎となる大切な考え方だよ。
✔学習内容
・応力と歪みの定義
・鋼の応力-歪み曲線
・フックの法則
・問題(令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-2)
ページコンテンツ
応力と歪み
まずは意味から確認します。
「応力」とは、単位面積に作用する力のことです。
一方、「歪み」とは、物体の歪んだ量と代表長さの比率のことをいいます。
応力と歪みは材料がどれだけ変形したかの指標となります。
とくに弾性領域(のちに説明)ではフックの法則と合わせて用いることで、材料の変形量を計算で求めることができるようになります。
断面積$A_0$ $[m^2]$、高さ$L_0$ $[m]$の材料を荷重$P$ $[N]$で引っ張るとき、応力と歪みは以下のように定義されます。
公称応力と公称歪み
変形前、断面積$A_0$ $[m^2]$、高さ$L_0$ $[m]$の材料を荷重$P$ $[N]$で引っ張るとき、
公称応力と公称ひずみは以下のように定義されます。
- 公称応力
$$σ_n=\frac{P}{A_{0}}$$
- 公称歪み
$$ε_n=\frac{L-L_0}{L_0}=\frac{λ}{L_0}$$
- $σ$ $[N/m^2]$:応力
- $ε$ $[-]$ :歪み
- $P$ $[N]$ :荷重
- $A$ $[m^2]$ :面積
- $L$ $[m]$ :長さ
- $λ$ $[m]$ :歪み量
真応力と真歪み
また、「公称応力」、「公称歪み」とは別に「真応力」、「真歪み」という表現もあるので、確認しておきます。
断面積$A_0$ $[m^2]$、高さ$L_0$ $[m]$の材料を荷重$P$ $[N]$で引っ張り、
断面積$A$ $[m^2]$、高さ$L$ $[m]$の状態になったとき、
「真応力」と「真歪み」はこのようになります。
- 真応力
$$σ_t=\frac{P}{A}$$
- 真歪み
$$ε_t=\ln\left({\frac{L}{L_0}}\right)$$
一般に、一軸引張試験を行った際に得られるのは公称応力ー公称歪み曲線です。
応力ー歪み曲線(鋼)
一般的な鋼の公称応力ー公称歪み曲線はこのようになります。
応力ー歪み曲線は一般に、「弾性域」と「塑性域」に分かれます。
弾性域
弾性域とはフックの法則が成立する範囲です。
この範囲では、変形した材料は荷重を取り除くともとの形状に戻ります。
塑性域
塑性域では、荷重を取り除いてももとの形状に戻りません。
この範囲ではフックの法則は成り立たず、この領域での応力と歪みはn乗硬化則という法則に則ります。
フックの法則
弾性域における、応力と歪みの関係を示したのが、フックの法則です。
- フックの法則
$$σ=Eε$$
$E$ $[N/m^2]$:ヤング率(縦弾性係数)
先程までの知識を使い、以下のように書くこともできます。
$$\frac{P}{A_0}=E\frac{λ}{L_0}$$
このヤング率$E$は、材料によってその値が決まっています。
材料 | ヤング率(縦弾性係数) [GPa] |
ゴム | 0.01~0.1 |
PET | 2~3 |
木材 | 8 |
Mg合金 | 40 |
Al合金 | 70 |
銅 | 200 |
ダイヤモンド | 1000 |
問題
問題画像は公益社団法人日本技術士会ホームページからダウンロードしたものです。
【令和3年度技術士一次試験[専門科目] 機械部門 Ⅲ-2】
両端を剛体壁によって固定された、長さ$BD=l$、一様断面積$A$、縦弾性係数$E$の円形断面棒が中間点$C$($BC=a$、$CD=b$)に軸方向荷重$P$を受ける。このとき、$C$点の移動量として、適切なものはどれか。
【解答】
$BC$間にかかる引張力を$F_{BC}$、$CD$間にかかる圧縮力を$F_{CD}$とすると、力のつりあいより
$$F_{BC}+F_{CD}=P$$
点Cの移動量を$λ$とすると
$$\frac{F_{BC}}{A}=E\frac{λ}{a}$$
$$\frac{F_{CD}}{A}=E\frac{λ}{b}$$
よって
$$P=F_{BC}+F_{CD}$$
$$P=AE\frac{λ}{a}+AE\frac{λ}{b}$$
$$P=AEλ\frac{a+b}{ab}$$
$$λ=\frac{Pab}{a+b}\left(\frac{1}{AE}\right)$$
$$=\frac{Pab}{l}\left(\frac{1}{AE}\right)$$
よって正解は⑤となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
材料力学の基本である、応力と歪みについて説明しました。
応力と歪み、フックの法則を利用する問題は技術士一次試験でも頻出です。
必ず理解して得点できるようになってください。
過去問を完璧に解けるように繰り返し解くことが、技術士一次試験合格の近道です。
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